私の目を見た先輩は、

私の布団の横に腰を下ろすと話し始める。




「桃華が引っ越してきてすぐ、俺がなんかで保健室に行った時、本当は環奈に付いてきて欲しかった。

久々に会ったあいつの性格は、なんだか俺には面倒だった。

朝、環奈と待ち合わせていたあの場所に向かおうとすると桃華の母親に引き止められて行けなかった。本当に悪かったと思ってる。

俺は環奈より桃華が良いなんて思ったこと1度も無い。なんなら今でも環奈が好きだと思う。あの時、環奈が元気が無かった理由、っていうか悩み?を環奈が俺に相談してくると当たり前のように思っていた、本当に馬鹿だったよ」




そこまで聞いただけで、

頭がぐちゃぐちゃになった。

私が思い込んでいた先輩とは全然違ったからだ。


全部、私の勝手な妄想、だったんだ。

先輩は何も悪くなかった。


先輩の気持ちが分からなかったんじゃなくて、

私が、分かろうとしていなかったのだと

ようやく気付く。





「一ノ瀬、先輩…あの、私っ!」


「待って、俺が話すから。

あと、一ノ瀬先輩っていうのやめない?」



「……裕也、君。」




苦笑いしながら、

そう頭をかく彼に安心し始め、

昔のように裕也君と呼ぶ。


落ち着く、この感じ。