数日がたった朝、私と美月ちゃんが2人で登校していると、向こう側から一ノ瀬先輩と笑顔の桃華先輩が並んで歩いてくる。
一ノ瀬先輩を見ると、まだ胸が痛い。
全て自分が引き起こしたことなのに。
逃げすぎて立ち向かうのが遅すぎた私には当然の結果かもしれない。
不幸中の幸いとでもいうのか、桃華先輩があれから嫌がらせを受けているところは見ていないと美月ちゃんが言っていた。
素直に喜べない私は、やっぱり性格が曲がっているのだろうか?
だからといって、一ノ瀬先輩ともう一度話すことなんて出来ない。彼を目の前にすると手足が震えてすくむのだ。
それを知っている美月ちゃんは私の背中をぐいっと押すと早歩きを始める。
美月ちゃんがいなかったら私、今頃どうなっていたんだろう。
「美月ちゃん、ありがとう」
「何言ってんのよ、こっちのセリフ!」
美人でハキハキしているけど優しい美月ちゃん。私が男の人なら美月ちゃんをほっとかないだろうなと思いながら、教室に向かった。
何日もの間、学校を休んでしまったため、職員室に大量のプリントをとりに行くと、空き教室から何やら話し声が聞こえる。
「桃華、あいつおかしいよね。環奈と付き合ってた一ノ瀬とあのタイミングで付き合い始めるんだもん」
「桃華が無理矢理別れさせたんじゃないの?」
「私もそれ、思ってた」
「一回、呼び出しとく?」
3年生だ。
気付かれないように階段の方まで早歩きすると、息を呑んだ。
聞いてはいけないものを聞いてしまった。また始まるんだ、桃華先輩への嫌がらせが。
でもなぜか、前のように悲しい気持ちになれなかった。誰かに伝えなきゃいけないのに、伝える気にもなれないのだ。
こんなんじゃ、まるで私が桃華先輩をいじめて欲しいって思ってるみたい。
昨日、思い当たる限り、一ノ瀬先輩の写真を捨てた。
誕生日にもらった、アクセサリーも。

