「話したいことがある」
「い、嫌」
そう私が言うと、泣き止んだ美月ちゃんが顔を上げる。
複雑そうな、でも真剣なまなざしで私を見つめる一ノ瀬先輩。
この人は私のことを見ていないハズなのに、何で私はこんなにも引きずってしまうのだろう?
心が引き裂かれそうだった。
本当は別れたくない。
桃華先輩とばっか話していても、あなたがカッコ良いのは変わらなかった。
ちゃんと話して聞きたいことがたくさんある。
私が謝らなければいけないこともある。
別れる前にせめてありがとうって言いたい。
でも、もうこれ以上傷つきたくない。
美月ちゃんが傷つくのも嫌だ。
桃華先輩がいじめられているのを見るのも嫌だ。
なら、私が別れてゆう…一ノ瀬先輩が桃華先輩と付き合ってることにすれば全部まるくおさまるじゃない。
私が諦めれば、全て上手くいく。
「環奈頼む」
「桃華先輩とお幸せに」
「は?」
「今、さら…もう無理です。私の名前をもう、呼ばないで下さい。お願い、します。」
これで良い。これで良いんだ。
一ノ瀬先輩が多少スッキリしなくても、私をほったらかしにした罰だ。
「桃華先輩と一ノ瀬先輩がお付き合いしてることにすれば、もう全部大丈夫じゃないですか」
そう最後に頑張って笑って言うと、美月ちゃんに抱きしめられる。
一ノ瀬先輩から隠れられた私の目からは、緊張が解けて一気に涙が溢れ出した。
何も言えなくなったのか、一ノ瀬先輩は気付いた時にはもう保健室にいなかった。

