フレーム






久しぶりの海外で背伸びをすると、カラッとした空気が肌を撫でた。

あぁ、気持ち良すぎる。

何もかも嫌なことは忘れようと決め、携帯電話や学校の教科書は持って来なかった。



「環奈、あんま離れるなよ。あとパスポート出して」


「はーい」



そう師匠の後ろに付いて行きながら、カバンのチャックを開ける。

あ……

鞄のチャックに結んでいた裕也君からもらったお土産を掴んでいたことに気づいて、立ち止まってしまう。

ただの、目印なんだから気にしないでいいじゃない。

そう思いなおし、鞄を開けたんだ。





そして、師匠の仕事がひと段落し、有名なアメリカ人女優さんに話しかけられる。



“Hi,Girl! Are you Mr. Endo's daughter?”
(こんにちは。遠藤の娘さんかしら?)

うわぁ、綺麗。
滲み出るオーラに圧倒されそうになりながらも、カメラをギュッと握ってこたえる。

英語の時はなぜか、人見知りが発動することは少ない、大丈夫だ。



“Ah…I'm not his sib. But he is my foster parent.”
(えっと、血は繋がってないですけど、遠藤は育ての親です。)


“I see…Don't you go to the school?”
(なるほどね、学校は行かないの?)


“…I'm cutting classes now”
(サボっちゃいました。)


女優さんはそう言った私を優しく抱きしめて、ぽんぽんと心臓のリズムに合わせてたたいてくれる。

それがなんだか心地よくて泣きそうになった。


"Teennaiger have many many hardships,and is too sensitive. But these experience is subservient to my jobs now. Escaping is important and facing is adversity with courage. Relax and think carefully.”
(10代の子達はツライことも多いし傷つきやすい。でも、その経験が私は今の演技に役立っているの。逃げることも必要だけど勇気を持って立ち向かうことも必要よ?リラックスして考えなさい)



そう言うとニッコリ微笑んで、女優さんは師匠の方へ歩いて行った。

なんて、素敵な人…。

私は逃げている。
だからいつか立ち向かわなければいけない。

リラックスして考える……

大人の言うことは簡単なようで難しい。
あんな大女優さんに助言してもらいながら逃げ続けるなんて、世界中のファンに怒られそうだ。

次だ。

次、学校へ行った時、先輩とちゃんと話しをする。
盗み聞きじゃなくて、ちゃんと。

そう決心して、現場の風景を写真におさめていったんだ。