ちょっとした興味から、
廊下の奥を見つめる。
カメラ、持ってる…
百合ヶ丘の人ではなさそう。
「まあ、そのうちカメラ以外の趣味見つけて、
いなくなるだろ、業界から」
「そうであって欲しいね。
元々、高槻光太郎、好きじゃないのに」
「高槻環奈、だろ?
遠藤カメラマンまでなぁ。
まあ、あの才能の塊で出来た奴に、何か教えられるとは思えないけどな」
お父さんと私と師匠の名前が出て、
驚きのあまり口元を手で覆う。
あの人達、カメラマンだ。
自分の悪口を言われるのは慣れているけど、
お父さんと師匠まで悪く言われるなんて…
言い返しても無駄だって分かっている。
悔しい。
何も知らないくせに。
師匠とお父さんがどれだけ頑張って…
私だってずっと……
「まあ、あれだろ。
顔が可愛いから写真もついでに注目されてるだけだ。あんな写真、何の価値もない」
刹那、
頭の中で何かが切れた音が聞こえた。
我慢、出来ない。
その場に立ち上がり、
噂話をするカメラマンの元へ足を踏み出す。
黙ってるままなんて、嫌だ。

