頑固な太一は、

こういう時に言うことを聞かない。

でも、なぜか今は…




太一「何?その顔」




そう薄く笑ってTシャツで顔を拭いて、

体育館に戻ろうとする。

え、何?

何の心変わり?




太一「今、考えたんだけど、

環奈は俺が心配しなくても大丈夫かな…って?」




そう太一が言い終えようとすると、

廊下の向こう側から誰かの声が聞こえたんだ。




「え、もう誰?

太一の成長に感動してたとこなのに…」




そう言いながらも、

廊下の奥の方を覗くと、

2人のカメラを持った大人がいた。


そして、太一の方を振り向くと

別の方を見て、ため息をついていた。




太一「環奈、泣いてる」




廊下の曲がり角でうずくまっている環奈を見つけてしまった。

この位置からだと、
俺らの会話は聞こえていないだろう。


頑張れよ、環奈。


もうこうなってしまったら

心の中で応援する他ない。




「…泣かせた張本人が何言ってんだよ」


太一「全部終わったら…あれ…」


「今度は何?!」


太一「あれ、一ノ瀬、って奴じゃないか?」




その一言で、

サーッと全てが台無しになった気がした。

太一がせっかく平常に戻ったのに、

何でこのタイミング?

2人の男に近づいていく、

百合ヶ丘の奴から俺は目が離せなかった。





隼人side.end