帰ったはずの太一君が
なぜか
私のすぐ側に居て、
離れようとした私を引き寄せた。
!!!?
まだ呼吸が安定しないためか、身体がフラフラしていた私は
あっけなく太一君に寄りかかってしまう。
太一君の胸に私の耳がぴったりくっついて、
太一君の心臓の音が聞こえる。
少し速いこの人の鼓動に何だか安心する。
もう一度離れようとしないのを、
疲れているせいにして、
離れたくないと思っている自分を咄嗟に否定した。
「環奈?」
「太一君はいつも…
いつも、私が辛い時にいるよね。」
そう勝手に私の口から出た言葉に黙り込む太一君。
その太一君を見上げた私は、
また口を開いて
「……ありがとう。」
"好き"と言ってしまいそうなのを押さえて、
無理矢理そう言ったんだ。

