「はやく教えろよー、試合始まんだろ。
気になりすぎてまた集中出来なくなる」
そうニヤッと笑って、
近くのベンチに腰掛ける太一君。
ズルい。
試合のことを持ち出すのはズルすぎる。
このこと言った方が
試合中気になるんじゃないの…
なんて思いながら、
目の前に座る太一君を少し見下げる。
いつもと違う角度に
カメラを構えたかったと
少し悔しくなりながらも、
再び覚悟を決める。
「じ、じっとしててよ?」
そう、太一君に言ってから
私は少しかがんで
「え、なん……で、」
太一君がそう言い終わる前に
彼の頬に軽く唇を押し当てたんだ。

