出来れば顔を上げてから言って欲しかった。
そう、太一君の息があたっていた首筋に
片手をあてながら太一君と目を合わす。
「だ、大丈夫。本当に大丈夫!
心配してくれてありがとう。
試合、頑張ってね!」
視界に入る桜田先輩と隼人が
やけにニヤニヤしていることには
気付かないフリをして
太一君にそう微笑むと、
「おう!
で、桜田先輩に何言われたの?」
「……え。」
試合中も私のことを心配してくれていたという、心優しいはずの太一君が、
片方の口角を上げてそう聞いて来た。
頬っぺにキスしてこいと言われました。
なんて言えるはずがない私は
後ずさりをしながら何か言葉を探す。
太一君ってどうしてこんなに鋭いの?

