フレーム








話し終えた桜田先輩は

私を太一君の方に向けさせて、

トンッと背中を押す。




「む、無理です!」


「えー?環奈のせいなのに?」


「ほ、本気ですか!?」




桜田先輩のこわい笑顔に圧倒されながら、

太一君の方を見れば、

こちらを不思議そうに眺めている彼と目が合う。


無理だよ…



『頬っぺにキスでもして頑張ってって言えば?』



なんて…

桜田先輩、何考えてるんだろ…

太一君、そんなに調子悪かったかな?



そして、ついに太一君の横まで来ると、


高槻環奈、

覚悟をきめるか。


そう思い、太一君に声をかける。




「た、太一君…」


「何言われたの?」




そう前の試合の選手達が

コートから去っていくのを見ながら、

私に、何でもないように聞く太一君のユニホームを

軽く掴む。


心臓がうるさすぎて、

コート内の声は全く耳に入らない。


桜田先輩のほうをチラッと見ると、

隼人と2人でこちらの様子をうかがっている。

見られてる……

やっぱり無理だ。




「環奈?」




すでにユニホームを掴んでしまった私は

何か言った後でないともう逃げられない。

そして、




「……がんばって…」


「ん?よく聞こえなかった。何?」




見上げて言わなかったからか

よく聞こえなかったらしい太一君が

少しかがむ。