「撮れる…」
パシャッ
いつもより、
少しだけ時間がゆっくりに感じる。
私がいつもより
速く動いてるからかもしれない。
それに、目に写る景色が
いつもと違う。
でも初めてじゃない。
ピーーー
すぐ近くで鳴り響く笛の音に
肩を揺らして、我にかえる。
……あ、やばい。
次の花崎の試合、ここのコートだ。
藤堂君の方を向くと、
顔の前で手を合わせてごめんと口パクで言う。
ただ1人で待っててもらっていた上に
直接お礼も言えないことがさらに
罪悪感を大きくする。
それでも、
藤堂君はニカッと笑うと手をふって
何事も無かったように歩き出した。
なんてお優しい…
そう思いながらも
心の中で藤堂君にお礼を言っていると、
「大丈夫?」
と、斜め上から聞こえる声。
太一君だ。
昨日もさっきも見たはずのユニホーム姿に
少しだけドキッとしながら、
「凄い、楽しいんだけど、
藤堂君への申し訳なさが…」
変な返しでは無かったよね?
こんなことをいちいち考えてしまう自分に
少しあきれていると、
逆隣から私の肩に腕がまわる。

