10秒、

いや20秒かもしれない。


そんな長い沈黙の後、

太一君は

私の横から目の前に移動し、

私の両肩にそっと手を置いて




「俺は環奈のこと、何も知らねーから、

今までどうだったか分かんないけどさ」




そう話し始める。



バレーしている時と

さほど変わらない真剣な表情に

何かを見透かされたような感じがして

少しドキッとする。



そして、太一君の顔を

真っ直ぐ見ると、




「辛いこととか、嫌なこととかがあって
耐えて耐えて、良いことがある時もあるかもしれない。


でも俺は、そんなこと無かった。

耐えて耐えて耐えて、
そんでもっとひどい状況になった。


それで、1人で考えんのやめて
隼人とか周りの人に言ったらさ、

凄い楽になった。

だからなんて言うんだろ……


環奈もさ、


もっと俺に頼ってよ。
絶対、少しは気が晴れる。」




そう太一君が続けて言ったんだ。