太一君に指摘され、
自分の手元に目を移すと
わずかだけど
確かに少し震えていた。
自分でも気づかなかったのに、
太一君は、やっぱり凄い。
バレーしている時に、
いつも色んなことを観察しているからだろうか。
これじゃあ太一君の前で私、
嘘、つけないや。
「太一君は凄いね…
でも、本当に大丈夫だから。
この人がこわい訳じゃないの。」
そう隣にいる太一君に、
微笑みかけると
真剣な顔のまま、
私を見つめ続ける太一君に
少したじろぎそうになるが
目はそらさなかった。
今そらしたら、
私がまだ、
あのセッターさんをこわがってるみたいになる。
本当に大丈夫。
いつも、こうだから。
慣れてるから。
ちょっと認めてもらえなかったからって、
大丈夫、だから。
そう自分に言い聞かせて、
油断したら変わってしまいそうな
自分の表情をそのままに保った。