スノーフレークス

 その軽作業っていうのが何なのか気になるのだけど。ともかく母さんの命が助かったのだから今は仏様にそのことを感謝することにしよう。

 ふいに頬に冷たい粒が落ちてきたのを感じた。
「あ、雪が降ってきたわ」
 私は曇り空を見上げる。折り重なった灰色の雲間から無数の白い粒が舞い落ちてくる。
「今朝やんだと思ったらまた降ってきたわ。本当によく降るなぁ」
 この調子だと父さんは明日の朝も駐車場の雪掻きをすることになるかもしれない。
「そりゃあそうよ、だってここは雪国だもん」
 氷室さんもハシバミ色の目で空を見上げる。
「あと一年と数ヶ月、卒業式までここに住んでいたら私もこの天気に慣れるのかな」
「慣れるわよ。雪の日だってそんなに悪くないわよ」
「そうでしょうね」
 私たちは長靴で道路の雪を踏みしめながら歩いた。私がツルツルのアイスバーンに足を取られそうになっている一方で氷室さんは雪の上を颯爽と歩いていく。
 私が雪道を上手く歩けるようになるまでには、もうしばらくかかりそうだ。

 公園の入り口で氷室さんと別れ、私は一路特売日のスーパーを目指した。私の頭の中ではすでに冷蔵庫の食材とスーパーの食材のコーディネートが始まっていた。今夜は母さんの好きなサトイモの煮っ転がしを作ろうと考えている。(了)



参考文献 鈴木牧之著「北越雪譜」 (岩波文庫)