私は思い切って答えた。

 氷室さんは動揺する様子もなく落ち着き払っている。
「今朝、西野のおばあさんは亡くなっていたわ。昨日の夜、あなたたちが呼び出して、不気味な息を吹きかけたから彼女は死んだのよ」
「一組の澁澤君があなたにそう言ったの?」
 あの後、澁澤君が私を助けたことを彼女は知っているみたいだ。
「ええ。彼はお寺の息子だから神秘的なことに詳しいの。あなたの正体にも気づいていたみたい」
「彼が私のことを『雪女』だって言っていたの?」
「いいえ。彼は明言を避けていたわ。ただ私に問題のヒントをくれただけよ。答はさっき図書室に行って自分で調べたわ。あなたに会った時のことよ」
「あの時はそのことを調べていたのね」
「ええ。昨夜あなたたちがやったことと、よく似たことが資料に載っていたわ。それで私、あなたの正体をはっきりと推測できたの」
「そう。まるで名探偵のように鮮やかな推理ね」
 氷室さんは淡々と言う。
「ねえ、氷室さん、教えてよ! 私、わからないことばかりだわ。西野のおばあさんは風邪をひいていたのに何であんなことをしたのよ。しかも昨夜はあんなに吹雪いていたのにひどいことをするものだわ」

「ちょっと落ち着いてちょうだい」
 氷室さんが待ったをかける。
「風邪で寝込んでいるおばあさんがそうかんたんに家を抜け出せると思うの? 普通は家族に止められるでしょう。おばあさんは畳の上で亡くなったのであって、私たちが凍死させたわけじゃないわ。あなたは探偵さながらに調査しているみたいだけど、まだ事実を正確にとらえていないわ」
「どういうこと? あなたたちがおばあさんの息の根を止めたんじゃないの?」
「まったく身も蓋もない言い方をするわね」
 氷室さんはそのきれいな顔を少し曇らせる。
「ごめんなさい」
「昨日の夜、あなたが見たのはおばあさんの霊魂よ」
「え! レイコン?」
 私は大きな声を上げる。
「そうよ。あの池でもそうだったけどあなたは見える人なのよ。あの晩、私たちはあのおばあさんの魂を外へ呼び出したわ。でもそれは風邪で弱っていた彼女に止めを刺すためではなくて、死にゆく彼女を冥府に送り出すためよ」
「冥府?」