眠り姫の憂鬱。



「彼女候補です!」


私が楓に負けないくらい大きな声でそう言えば、楓は顔を真っ赤にして、女の子は多分違う意味で顔を真っ赤にした。

その顔のつくりはそっくりで、兄妹なんだろうなと安易に予想することが出来た。


まず、楓が"お兄ちゃん"と呼ばれてる時点でほぼ兄妹で決まりなのだけど。



「お前はまたそうやって軽々しく言う!」

「軽々しくないよ!本気だもん!」


何度言ったら信じてくれるの?

もう!わからずや!

ほっぺたを膨らまして怒ったふりをする。


「お兄ちゃん?で、この人誰なの?」


女の子は眉を吊り上げてまた私をキツく睨んだ。

この子、楓のことがすごい好きなんだなあ。


楓は女の子に対して私が同級生だというなんとも簡素な紹介をし、反対に私には女の子が妹であることを告げた。

紹介される前から、わかってはいたんだけど。