眠り姫の憂鬱。



「楓?」

「…何でもない。行こ」


何でもないって言われちゃったらそれまでだけど、さっきのは何だったのか気になるのは仕方のない話だ。


そこからもうしばらく歩くと、再び楓が唐突に停止して、今度はおでこを背中にぶつけてしまった。

我ながら学習しないなと思う。


「着いた」


俯いていた顔をそっと上げれば、二階建ての家が目に入った。

庭にはガーデニングが施しており、温かい色をしたその家はとてもオシャレ。


私の勝手に想像していた家はモデルルームのような家だったから、かなり家庭的なその家は良い意味で期待を裏切られた。


楓はポケットから鍵を取り出すと、玄関を開けて中に入る。

私も続いて入ろうとすると、楓が壁に手を置き、とおせんぼしてきたからビックリして立ち止まった。


「…ねえ、そんな簡単に入っていいの?」

「え?」