眠り姫の憂鬱。



「いや別に。それだけならいいけど」


案の定それ以上の詮索をしない楓に、心底ホッとした。

これでまだ楓に嫌われずに済む。



「おい、葉月。そろそろ時間だぞ」


せっかく楓とお喋りできていたというのに、先生が水を差した。

先生が全て悪いわけじゃないんだけど、ちょっと空気読んでほしい、と思う。


「わかってますよっと」


私は鞄の中をガサゴソと漁り、ポーチから薬を取り出した。

更に登校時に寄ったコンビニで買ったミネラルウォーターを出して、錠剤を喉に流し込んだ。

もう慣れているけど、やっぱり薬を飲むのは面倒くさいし嫌い。


「…なんの薬なわけ?」

「ほ?」


楓に向き直ると、私にすごく真剣な眼差しを向けているのがわかった。

私のこと心配してくれてるのかな、ってニヤけそうになるのを堪えて、私もすごく深刻な顔をする。


「お前、ホントに病人とかなのか?」


黙っている私に追い討ちをかけるように質問してくる楓。

彼の表情からは焦りのようなものも感じられて、余計に笑ってしまいそうになる。