眠り姫の憂鬱。



「三郷くんっ!!」


私が呼び止めれば、ゆっくりと振り返りその少し気だるげな目に私を映す。

私は、私の声に反応してくれたことが嬉しくて、笑顔で三郷くんに飛びついた。


「…なんだよ」


嫌そうな顔をしながらも、私を突き放そうとはしない三郷くんはやっぱり優しいなあと思う。


「えへへ。どこいくの?」

「トイレ」

「へぇ!そうなんだ~」

「…いや、離れろよ」


三郷くんはたいそうトイレに行きたいみたい。

私はしぶしぶ三郷くんを掴んでいた手を緩めた。

さすがに私もトイレに付いていくって言い出すほどキモくて常識ハズレな奴ではない。


ほら、早くトイレ行ってきてよ。

そう思っているのに三郷くんは私をじっと見てなかなか動こうとしない。

私は不思議に思って首をこてんと傾げた。