眠り姫の憂鬱。



ニヤける口元を押さえて、すれ違う他の生徒から隠した。


第2音楽室は3階にあるから、階段をイチニ、イチニって上る。

普段から運動しない私は階段を上るだけで息が上がってしまうから困る。


そして、2階から3階に続く階段を上り始めた時、ポロンと優しいピアノの音が聞こえてきた。

この音って、まさか…。


第2音楽室を窓から覗いてみると、やっぱりそこにいたのは三郷くんで。

グランドピアノの前に座った三郷くんは黒髪を揺らして綺麗な透き通った音を奏でている。

三郷くん、ピアノ弾くの上手…!


私は思わず拍手をして音楽室に入った。


「すごいね!三郷くん、ピアノ弾けたんだね!」


私がそう言うと、三郷くんは目を大きく見開いた。

私がここにいることに驚いたんだと思う。