眠り姫の憂鬱。



ふらふらと隣のクラスに行って、覗いてみるとそこには三郷くんの姿は見えない。


もう帰っちゃったのかな。


ちょっぴりショックを受けてガクンと頭を下げた。


「…あれ?ハヅキちゃん?」


私を呼んだ声はもちろん三郷くんじゃなくて、誰だろうと思いながら顔を上げると、どうやら声の持ち主はこの前三郷くんと一緒にいた男の子のようだった。

男の子は目を丸くして教室の端からこちらへ向かってくる。


「どーしたの?」


そして私の目の前まで来ると人懐っこい笑顔を浮かべた。


「あのね、三郷くんに会いたかったんだけど、もういないね」


へへっと笑って言うと、男の子は直球だなあ、って笑った。


「楓ならたぶん音楽室にいるから行ってみなよ」

「音楽室?」


なんでそんな所にいるの、三郷くん。

え、もしかして三郷くんって吹奏楽部なの?