眠り姫の憂鬱。



まあいいんですよ。彼女になれたってことが大きいんですから。それだけで十分なんですから!

少し寂しいという気持ちもあるけれど、これから先は長いんだからそんなに焦らなくてもいいんだと自分に言い聞かせている。


「てか前から思ってたけど、お前すぐ抱きつく癖あるよな」

「え、そう?」


言われてみれば、気持ちが高ぶった時、抱きついてしまうことが多かった気がしなくもない。感情の表現としてそうしていたかも。


「そういうのが思わせぶりだったりするから気をつけた方がいいぞ」

「誰彼構わず抱きついてるわけじゃないよ!」


人を痴女みたいに言わないでよね。

ぷんぷん!と怒ったふりをしてみる。

が、楓は私を気にする様子もなく眉一つ動かさず隣を歩いている。


「あ!そうだ!楓の小さい頃の写真ちょうだいよ!見たい!」

「嫌だ。なんであげなきゃいけないんだよ」

「楓は私の小さい頃を見てるんでしょ?ズルいよ!私だって見たい」

「嫌だ」

「ケチ!」