眠り姫の憂鬱。



思い出すのも嫌だと言った楓は相当恥ずかしいらしく顔を真っ赤にしている。


「だいたい告白されてんのはお前もだろ。毎日のように告られて、学校の男子全員から告られる気かよ」

「私はちゃんと断ってるもん」

「俺だって断ってるっつーの」


私たちふたりが付き合っていることは内緒にしてるわけじゃないし、結構言ってるのになぜか噂は一向に広まらない。

なんでなんだろう。

誰がいつ楓に告白したという情報はいくらでも出回っているのに。


「んー、じゃあ手繋いで登校する?」

「ムリ」


ですよねえ。

即答で断られることにも慣れなければ楓の彼女は務まらない。

気付けば想いが通じ合った日から数ヶ月が経つというのに、キスは愚か手を繋いだことはない。

抱きしめるのだってほぼ私から。っていうか楓からギュッでしてくれたのは目覚めた時のみ。