「無防備すぎんだろ、バカ」
楓の顔がゆっくりと遠退いていく。
私は呼吸も忘れてただ、じっと楓を見ていた。
目を離すことができなかった。
「わり、頭冷やしてくる」
楓が保健室を出ていく。
保健室の扉がピシャリと音を立てて閉まったのを合図に、やっとちゃんと呼吸することができた。
バクバクという心臓の音が体の内側を反響して、それ以外聞こえない。
体中が、熱い。
なに…、これ。
今まで彼氏と呼ばれる人とキスをした時なんかより、ずうっとドキドキして顔から火が出そうというか顔に火がついてるんじゃないかってくらい熱い。
こんなの知らない。
頬に手を当てて熱を冷ます。
ひとり保健室で、初めての感情と格闘した。



