「ごめんね、ただの運動不足だから」

「…何に対して謝ってんの」

「だって、心配して来てくれたんでしょ?」


楓は心配性だから。

私のことを誰からか聞いて駆けつけてくれたんだと思う。


「俺が自分の意思で来たんだから謝んなくていーの」


この人は本当に優しすぎるよ。

好きな人がこんな素敵な人で私は幸せだ。


「…雅、本当にただの運動不足?」

「…っ、そうだよ?2年ぶりに走ったから体がびっくりしちゃったんだよ、きっと」

「運動不足なだけでそんなに顔色悪くなるか?」


私の顔色ってどれだけ酷いんだろうか。

楓が悲しそうな顔をするから私まで悲しくなっちゃう。


「どうだっていいじゃん!私は元気だよ」

「良くないだろ!お前は俺の気持ちを全然わかってない!」


突然大きな声を出されたので肩が跳ねた。

何が起こっているのか理解が追いつかなくて、頭の中がぐるぐるする。

「ど、どういうこ、」

「心配してんだよ…。だいたいお前はさ、」


楓の顔が一瞬のうちに近づいて来たので目をぎゅっと瞑った。


──ゴツンッ


おでこに鈍い痛みを感じ、ゆっくりと目を開く。

どうやら私のおでこと楓のおでこがぶつかったらしい。

至近距離に楓の顔があってカーッと顔が熱くなった。