楓はそのままツカツカとこちらに向かってきた。
「じゃあ俺は行くよ」
駆琉くんはそう言って立ち上がり扉へ向かう。
楓とのすれ違いざまに止まって何か話していた。
「あんまり余裕ぶっこいてると俺が奪うよ?」
ふたりが何を話していたのか聞こえなかったけれど、ふたりの間のただならぬ空気を感じていた。
駆琉くんが何か言葉を発すると、楓が睨みを利かせる。
私は何が何だかわからなくてオロオロするだけだった。
駆琉くんが保健室を出ていって楓は真っ直ぐ私の方に歩いてくる。
「か、楓?」
声をかけても応えてくれず、そのままさっきまで駆琉くんが座っていた椅子に座った。
む、無視された…!
ショックを受けつつもへらりと笑って再び話しかける。
「走って来てくれたの?」
すると、いきなり楓の顔が真っ赤になった。
「そ、そんなわけねーだろっ!」
よかった。いつもの楓だ。
そんな全力で否定しなくてもいいのに、とは思うけれど。



