眠り姫の憂鬱。



3人でスタート位置まで移動する。

前の方には陸上部や野球部の賞品を取りに行くガチ勢が集まっていた。


「緊張するな〜」


ちゃんと走れるだろうか。

そればっかりがずっと不安。


「雅ちゃんって体育はいつも休んでるよね。運動ずっとしてないの?」

「高校入ってから1回もしてないよ」


正直に言うと、もっと前から運動とは無縁の生活を送ってきた。


「マジで?!大丈夫?」

「頑張る!」


大丈夫と断言できない私は、頑張るとしか言えなかった。

私の体のことは私が一番わかっているけれど、わからないこともある。

体がどのくらい持ちこたえてくれるかは未知の領域だ。


──パンッ

乾いた銃声音と共にマラソン大会の幕が開けた。


前の方の人から順に走り出し、それに続いて私たちも走り出した。

思いのほか足は軽く、順調な走り出しと言える。


ちらりと隣を盗み見ると真依が軽快な足取りで走っていた。

その光景が新鮮で、笑みが溢れそうになった。