眠り姫の憂鬱。



「ホントに大丈夫?」


真依がこう聞いてくるのはこれで3回目だ。


「大丈夫だってば!今から楓のクラス行ってくるし」


真依は部活でやる模擬店の店番が回ってきたらしく、私と廻れないことが気がかりのようだ。


「気をつけるんだよ、他校の人とか一般の人もいるんだから」


人混みに紛れていく真依を見送り、私は楓のクラスに向かった。

楓のクラスのカフェは文化祭で一番楽しみにしていたものだ。


スキップする勢いで歩き、たどり着くとカフェはなかなか混雑していた。

廊下にも数名だが並んでいる。

私はその最後尾に並び、窓から覗き込んで楓の姿を探した。

するとものの数秒でピンクのクラスTシャツを着た楓を見つけることが出来た。

好きな人っていうのは不思議なものだ。すぐに見つけられる。

本人はピンクのTシャツを嫌がっていたが、案外似合っていた。