傷だらけのココロに、癒しの愛を。〔仮〕



み、お。
男の子はたいてい
あたしのことを「日野さん」とか
「日野」って苗字で呼ぶから、

低い声で呼ばれる自分の名前が
少しくすぐったい。

そして隼人のことを思い出して

また、涙が出そうになる。

「そんなとこ突っ立ってないで、

こっちくれば」

あたしがいるのは

階段を上がりきって

一歩も歩いていないところだ。

今さら降りるのもどうかと思ったので、

お言葉に甘えて
一之瀬くんがいるのとは反対側の
端の席に腰をおろした。

間には3つぶん、席が空いている。