「…美桜、寝た?」 本当は起きてる。 でも、今は隼人の呼びかけに答えられない。 ダブルベッドで同じ布団に 横になっているけど、 背中合わせの今だから、 この涙には気づかれてないんだ。 隼人が静かに部屋を出る音がする。 「…どこ、行くの…」 あたしの声は、 ひとりの部屋にむなしく響く。 「…うぅ…ひっく…」 この旅行だけは、 最初で最後のものだから、 楽しいものに、したい。 たとえ、形だけでも。