二人そう願っても、一向に降り止まない雨。
「…やっぱり、無理なんだよ」
そう、あきらめかけた時だった。
なぜか、座席近くにはたくさんのオーディエンスがいる。
「…えっ、なんで…?」
「俺が呼びかけた。絶対雨晴らすからって。真琴の歌、めっちゃいい歌やから祐くんだけに聞いてもらうのには贅沢やわ」
そう言って少しドヤ顔をする渓くん。
「そんなの…反則だよ」
私の目から一筋の涙が流れた。
…それと同時に、雨が少しずつ止んできた。
「あ、め……?」
嘘かと思ったけど現実で。
雨は本当に降り止んだんだ。
たくさんの雲の間から差し込む一筋の光。
ああ、本当に祐がいるんだ。
そう実感した時だった。
「よしっ、これでライブ始めれるな。真琴、準備してきて」
渓くんは今からが本番といった様子ではりきっている。
