午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―

最後まで迷惑をかけてしまうとカザリナは落ち込んだけれど、母親は穏やかに微笑んで娘の背中を押した。

「娘の幸せを誰よりも願うのは、母の特権ですよ」

私も一緒に行きたいのだけれどと漏らす母親に、カザリナは慌てて首を振る。

温かい家族を持てたことが、彼女にとって最大の幸運だ。

「さあ、カザリナ様」

促す腹心の侍女に頷いて、カザリナは馬車に乗り込む。

もう二度と、黎の地を踏むつもりはない。

愛した王を殺す女が治める国。

そして彼女は声に出さず、胸の内でそっと囁いた。



――妻になりたいと願ったひとを奪った女。

私はあの女を、決して許さない。










end.