午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―

「陛下……」

愛しすぎて、カザリナはもう疲れてしまった。

ようやく穏やかな愛を実らせた相手は、彼女を手放して自ら死の闇に歩もうとしている。

「シリアに手紙は届いたかしら」

最愛の親友であるジュリアの妹に送った手紙。

感謝の思いを込めて、他国へ嫁ぐことになったと手紙を書いた。

それを受け取った聡い彼女が、クロスリードに伝えてくれることを願って。

優しすぎるかのひとは、きっとカザリナのことを気に病んでいるだろうから、少しでもその負担を減らすために、カザリナはあえて嘘を書いている。

本当は王女だった母の祖国に向かうだけだ。



――静かな場所でクロスリード様のことだけを想っていたい。

そんな願いを打ち明けた娘に、別荘へ様子見に来ていた元王女の母親は「私の国へ行ってみなさい」と勧めた。