午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―

「謝らないでくださいませ。とても恥ずかしいのに……」

項垂れるカザリナの髪を、クロスリードはゆっくりと撫でる。

「いつまでもあなたは美しいです」

「か、からかっていらっしゃるの!」

唐突すぎる言葉にカザリナは憤慨したが、クロスリードはしれっと答えた。

「本心です」

肩から流れ落ちた髪を指に絡め、クロスリードはじっくりとカザリナの髪を見つめる。

するりと解いたかと思えば、また絡めて見つめるのだ。

悪戯をする指先が珍しく、カザリナはどうしていいのか分からなくなる。

クロスリードの指先は、カザリナの髪を解放し、細い首筋へと移った。

浮き出た骨の形を辿って、首の後ろをなぞる。

「カザリナ」

不意に呼び捨てられて、カザリナは反射的に返事をした。

「会うのは今日で最後にしましょう」