午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―

そしてそっと、囁く。

「あなたはここで、ゆっくり待っていてください」

それはカザリナを遠ざける言葉だ。

力になりたい。

喉まで出かけたその言葉を、カザリナはのみ込んだ。

――私を、遠ざけるの……?

魔王からも、そして自分自身からも。

クロスリードという男をよく知っているカザリナだからこそ、彼がもうカザリナに頼らないつもりであることを悟った。

カザリナは失敗してしまったのだ。

今や王の目はカザリナに向けられている。

カザリナに対して何の行動も起こさない王の態度は不気味だが、クロスリードはその理由すら気づいているようだった。

カザリナを王から守るため、そして己の目的を今度こそ確実に遂行するために――彼はカザリナを遠ざける。

「恐れなくとも、必ず終わりは来ますよ」

その言葉は、真実だった。