ひっそりと囁かれた言葉に、カザリナは息を呑んだ。

「クロスリード様?」

先を促すように声をかけると、クロスリードはぽつりぽつりと語り始める。

そこから知ったのは、忌まわしき人間の少女の話と、初代王から受け継がれる呪いのような記憶。

崇高なる魔王たちが秘めてきた記憶の内容に、カザリナは言葉を失った。

――初代王妃? それを、歴代魔王は……陛下はずっと求めていたですって?

あの冷徹な美貌の裏に、そのような激しい執着を抱いていたのか。

クロスリードを支えながら、カザリナは魔王を縛る鎖とも言える恋情に怯えを抱いた。

激しすぎる愛の先にあるのは――破滅だ。

互いが互いに溺れ、生命ですらも放棄する。

初代魔王である黎稀を愛し、彼の後を追って死んだ十六夜姫もまた、破滅したと言えるだろう。