「ところで、つっちゃん」
「何だよ。私、二度寝すっから手短に」
「さっきから敬語つかってへんけど、大丈夫なん?」
「……」

何度も話した通り、私の立場は朔より下だ。
大分下だ。
だから、私は朔に敬語(尊敬しているとは言っていない)を使っていたのだ。もし、タメ口でもきこうものなら、私はさらにひどい悪意の暴風雨に晒されるだろうから。

……まあ、朔以外に聞いてるやつもいないし今回はノーカンで。

「お前が言わなきゃ大丈夫だ」
「もし、ばらしてしもたら?」
「私がお前をバラす」
「目がマジや」
「はいはい。つーわけで、よろしく頼むよ、『朔様』」
「任せとき、俺は口だけは堅いから」
「……朔様の口はヘリウムよりも軽いと認識していたのですが」
「つっちゃん、俺、泣くで?」
「二度寝しますから、おやすみなさい」
「つっちゃん? つっちゃん? 寝るの早いで?
布団に潜ってから一秒も経っとらんよ?」

朔の声は聞こえなかった振りをして、私は二度寝を始めた。