大広間が静まり返る。
さっきまでのどんちゃん騒ぎが嘘みたいだ。

箸と器が触れる、カチャカチャという音も、
中年たちのペチャクチャうるさい世間話も、
躾のなってない子供たちが走り回る音さえも、聞こえない。

「……皆、どしたん?」

この状況を作る原因になった男は、間の抜けた声を出す。
いや、「どしたん?」じゃない。
貴方のさっきの発言のせいだろう、誰がどう診てもそうだろう!

「……朔様、ご冗談ですよね?」

家政婦の一人が男に問い掛ける。

「はあ? 何言うとんねん? 冗談なわけないやん。
な、つっちゃん!」

男は――――朔様は、少々機嫌を損ねたようで、拗ねたような顔で家政婦を見た。

いやいや、そこは空気を読んで「バレた?」とか言うべきだろう。
否定するな。
そして私を巻き込むな、頼むから。土下座でもなんでもするから。

「俺はつっちゃんと結婚する!」
「……私を巻き込まないでください、本当に。お願いします」

私はそれはそれは綺麗な土下座をした。