9月10日






眩しい光と電子音で目が覚めた。

外で風に運ばれる枯葉を見つめて十年間も眠っていたかのような体をうんと伸ばしてあくびをする。

一気に力が抜けた時、疑問が浮かぶ。


「なんでここにいるの?」

なぜ自分が病院にいるのか。私は誰なのか。というか自分に関することすべて思い出せない。

そんなことがずっと頭の中をぐるぐると回っている。

急なノックにビクッと身を強張らせ、ドアを見つめた。

40代後半くらいの顔が整った医者らしき人が顔を覗かせる。


誰だこの人。

「おはよう。気分はどう?」

軽い挨拶に安堵し答える。

「おはようございます。気分は良好です。あの、私はどうして病院に…?」

少しため息をつき40代後半くらいの顔が整った医者らしき人は話し始める。


「俺は神崎で君の担当医。君はね事故にあったんだよ。」

「事故…?あの、私の名前は…?」

「君の名前は桐生加奈、高校1年生の女の子だ。学校に行く途中交通事故にあって記憶をなくしているんだ。今は様子を見るために入院してもらっているんだよ。自分のことがわからないと思うけど、それは事故のせいなんだ。」

「桐生…加奈…」

「君の両親も俺も君を出来るだけサポートするから心配いらないよ。もし体に支障が出なければ元の生活にも戻れるよ。昨日も説明したけどまだ混乱してるみたいだね。」

「え、昨日…?前にも話したことがありましたか?」

「ああ、昨日ずっと君と君のお母さんといたよ。まさかそれも忘れたのか?」

「ごめんなさい何も記憶になくて…思い出せない…」

「あーー…最悪だ…まさかな…」
「なんですか?」

耳鳴りがして聴き取れない。声にモザイクがかかったみたいにもやもやする。
頭が追いついていけない。

「えっ…」


数時間後、1日しか記憶が持たないなど想像もしなかった事実を突きつけられ、茫然としながら白い壁を見つめた。