高校に上がったばかりのころに一度、先生のサイン会に行ってみたことがある。

 新刊発売を記念した、サイン会。

 会場の書店は、満杯で、きれいな女の人がほとんどだった。

 わたしは、自分がひどく子どもなことに傷ついた。

 ここにいるひとたちの中に、先生に選ばれるひとがいるかもしれない。

 その思いつきは、わたしの心をかきむしり、荒らした。

 感情をおさえこみ、列に並んだ。