初めて私と始が恋バナをしたのは私が始を好きになって1ヶ月くらいの頃。
その時も、私は窓際の席でため息をついていたんだ。
『よお、八田。なんか悩んでんの?』
『え?!』
あの頃はまだ八田って名字で呼ばれていて、悩んでいる原因に声をかけられてすごくびっくりしたのを覚えてる。
『悩んでる…けど。なんでわかったの?』
『わかりやすくため息ついてたからな。なあなあ、なんの悩み?』
屈託ない笑顔で迫られて、私は言葉に詰まった。
告白する勇気なんて今もだけど、当時も当然なくって。
だから適当に誤魔化そうと思った時、始が無邪気に決定的な言葉を発した。
『もし恋愛関係なら、俺も知りたいな。実は俺、片想いしてんだよね』
その途端、サッと胃の下の辺りが冷えるような感じがしたのを覚えてる。
どう答えたらいいかなんてわからなくて、結局始の好きな人が知りたかった私は半ばヤケクソになって、作り物の片想いの話をしたんだ。
そしてそれから、終わらない始の片想いに合わせて、私の嘘の片想いもコロコロ形を変えている。