「あ、もうこんな時間…」 椎名の視線の先を追えば、壁にかけられた時計のハリは、もう遅い時間を指していた。 「じゃあ、俺はそろそろ帰るな」 「はい、お気をつけて」 玄関で靴を履いてから、ドアに手をかける。 「………」 「…ハル先輩?」 ドアを開けない俺に、椎名は声をかけた。 「あのさ……」 俺はゆっくり、椎名の方を振り向く。