そして、驚く俺を横目に、椎名は続ける。 「…私が、中学2年になった夏休みのことでした。 兄はその時、中3で。最後の大会が迫っていました。 大会の数週間前…、私は風邪で寝込みました。 うちは両親が共働きだったので、優しい兄が部活の練習を休んでつきっきりで私を看病してくれていました。 それでも、中々私の風邪は治らなくて。 ある日、薬が切れたから買ってくると言って、兄は家を出て行きました」 「………」