「え、じゃぁ、足触らせてたのって…」

「見てたんだ?」


内容は、テーピングのやり方を羽美センパイに伝えておくというもの

気を使って帰ってくれたのか

本当は早く二人になりたかっただけなのか


きっと、両方なんだだろうな


「あー、もう!
なんなんだよ!!」

「え?」

「あいつ、性格悪いな!!」


…なに言ってんだろ


「普通に考えて、それ以外で人の足に触んないでしょ」

「いや、だってあいつっ!」


あげた顔を、そこでまたおろす

いつもワタワタとわけのわからないことをしてる気がするけど
本当に今日は行動が読めない


「何?」


顔を除きこむようにすると
観念したように口を開くのをあたしは知っている


「…俺の方見て、笑ったから」

「何それ」


颯センパイ、何やってんですか


「それで、焦ったの?」

「あ、いや…そう…」


…性格悪いですけど、グッジョブです


「…果奈は、ずっと千春が好きだと思ってたから」

「まだ言うの?」

「いや、うん、じゃなくて
千春は果奈に興味なさそうだったし…」


…事実だけど、失礼だな


「だったら、果奈は誰のものでもないなって、勝手に思ってた…」

「え、」

「だから、まじで…
焦った…」


私も…

特別は、変わるわけないと思ってた



あたしたちに足らなかったものは
踏み込もうとする気持ち


怖がってたら、何も進まない

それでいいと、お互いに思ってしまっていた


「みんな、すごいな…」




あたしたちは弱虫で

あたしたちは自分に優しすぎた


妥協して、気持ちを飲み込んで

それでいいって無理矢理納得してた


変わるのが怖かったんじゃない

変えようと思わなかった


自分が一番だと思い込ませて

相手に確認なんてしなかった


あたしたちが傷つかなきゃいけなかったのは

あたしたちが、臆病から


「まぁ…
痛いほどよくわかったし、良いんじゃねぇの」


そう言って気まずそうにそっぽを向く


そうだね、あたしたちはバカだし
まだまだ弱虫だけど


「…ずっと一緒に、育ってきたしね」


だからこれからも


「きちんとした大人になれたらさ

もっと強い子供、育てようね」

「おまっ…」


吹き出して、こっちを向くバカ



「それまで、愛想つかさないでね
バ海斗っ!」

「こんだけずっと好きでいて、今更つかすかっつーの
バ果奈」


ずっと、一緒に





fin.