「バカ、アホ、鈍感、チビ」
「チビ!?」
「チキン、びびり、弱虫、泣き虫っ」
「泣いてねぇしっ!!」
昔は、よく泣いてたじゃんか
その声は、言葉にならなくて
「…お前の方が泣いてんじゃん」
「黙れ、あほぉ…」
何でまだ、気づかないの
戸惑いがちに涙をふく手が
何でまだ、震えてるの
「そういう台詞は、手ぇ放してから言いなよね…」
まだ捕まれた腕
そこに残る感情を、あたしは信じてもいいんでしょ?
「ほんとはどうしてほしいかくらい、ちゃんと言って…」
揺れる視界は、あんた以外に捕らえてないのに
そろそろ素直になってくれ
「…お前、誰でもいいわけ?」
「はぁ?」
「千春じゃなくても良かったわけ?」
「また、バ―――」
身体が引き寄せられて、一瞬、何が起こったかわからなかった
肩に、冷たいなにかが触れた
やっぱり、あんたも泣き虫じゃんか
「だったら、俺にしてよ…」
耳元で囁かれる言葉に、胸が締まる
「好きだよ、果奈…
ずっと、ずっと、果奈が好きだよ」
ほんと、バカ
こんな馬鹿真っ直ぐな想いに
今まで何で気づかなかったんだろう
「バーカ」
鼻を摘まんで、笑う
あたしは、笑えてるのかな
「…泣くなよ」
「あたしの方が、好きだよ」
その声に、目を見開く目の前のバカ
「帰ろ」
今度はあたしから
話さなきゃいけないことがたくさんあるから
