「颯さん、可愛い後輩ちゃんなんですから
びびらせないでください」

「おー、悪い悪い」

「部長ーーーーっ!!!!」


私たちが話しているのを見た先輩たちが
口々に叫びながら“颯さん”に突進していく


「くんなーっ」


叫びながら逃げる“颯さん”


「…颯!?
颯って、前の代の部長のですか!?」


うなずく羽美センパイ


速い
誰も、追い付けない

それに…


「きれい…」

「でしょ」


クスクスと笑う羽美センパイ

その目は明らかに、愛しい人を見る目


「この前、卒業したばっかりなのにまた顔見せに来たんだね」

「…格好いいですね」


からかいがてら、そんなことを言ってみる

明らかに羽美センパイの瞳が揺れた


「そう、かな?
子供っぽいとこもあるよ」

「へぇ、可愛いところもあるんですか
いいなぁ」


すると、今度は肩まで揺れる

可愛すぎて、吹き出してしまった


「冗談です!
いや、確かにかっこいいけど…

…すいません」


笑いながらそう言うと
恥ずかしそうに頬を染める羽美センパイ


「…知ってたの?」

「有名ですよ
いいですね、颯センパイ

めっちゃ愛されてるじゃないですか」

「まぁ、俺の愛がおっきいからさ」


羽美センパイの後ろまで戻ってきていた颯センパイに話しかける

急いで顔を覆う羽美センパイだけれど、もう遅い


「…いいなぁ」


呟いた声は、二人に届いてしまったみたいで

首をかしげる羽美センパイと
ケタケタと笑い出す颯センパイ


「なんですか?」

「ちょっとごめん」


そう断ったあと伸びてきた手

その手は、足へと触れた


「なにしてんですか、颯さん」


頭をはたく羽美センパイを無視して
私の足を触り続ける


「なんですか?」


私の問いにも適当な返事が返ってくるだけ

しばらくして、やっと返ってきたのは


「利き脚右?」

「え、はい」

「なんか、ちょっと張ってる
後でテーピングのやり方、教えるな」


それだけ言いながら、私の頭を撫でる

そうした後、呼ばれた方へ駆けていった


「…なに考えてんだろ」


羽美センパイのその呟きに
深く深く頷いた