「どうしたの?」
放課後
晴れた空
久しぶりの部活は、驚くほど集中できた
「…羽美センパイ」
「タイム、すっごい縮んでるよ?
何かあった?」
ものすごく真剣な顔で、心配されてしまう始末
「特に何もないですよーっ!
悲しいくらいっ!」
悲しいくらい、何もないだけ
その事実に、勝手に悲しんでるだけ
「…私、知ってるんだ
逆境に強い人
あんまり、頑張りすぎないようにね」
「…はい
ありがとう、ございます」
きっと、逆境に強いわけじゃない
ただ、忘れたいだけ
ただ、逃げてるだけ
ほら、今だって
トラックの中で練習しているあんたを見ないようにしてる
「走るの、好き?」
「へ?」
「好き?」
「…好き、です」
「じゃぁ、そんな顔で走んなっ!」
いきなり後ろから降ってきたチョップに驚く
「…えっと」
「そんなこっわい顔して走ってても何にもいいことないぞ?」
…誰?