「ったく、唄!なんて事してるんだよ!
お陰で追い出されちまったじゃねーか!」

「ごめん……なんかぐわ〜!ってきてつい……。」



あの後はというもの、係の人が私たちの元にやったきて瞬く間に追い出されてしまった。
流石は係員さん、見事な追い出しっぷりでした…なんて心の中て間係員さんを賞賛してみる。





「…ねぇ律、千歌……」


『折角聞きに来たのに!』と怒りをあらわにする律とそれを苦笑いで受け止める千歌に声をかける。


思えばこれが私の…春麻唄の原点だったのかもしれない……。


「…私、あのステージに立ちたい!
今度はあのおっきなステージで歌いたい!!」



先程あのホールで歌った時、感じた事の無いような高揚感を覚えた。
自分の声が名前も知らない他人に届く事が、嬉しくて堪らなかった。
あのステージから歌ったらもっともーっと、私の声を届けられるのではないか……。
そう思うといてもたってもいられなくなる。



「そうと決まったら練習だな!ほら、さっさと帰るぞ!」


私の心情を察してか、律はそう言って私と千歌の手を引いた。
ちらりと見えた律の顔は、今までにないほど生き生きしていた。