「うわぁ…おっきいね……。」



聳え立つビルの数々、その間に建つ一際大きいホール状のそれ。
周りにはキラキラとした電飾等の飾りを身につけていた。
軽音楽祭の会場は思いの外大きく、煌びやかだ。
ホール前にはギターケースを背負った沢山の人、
ホールの中からはチューニングをする音がいくつも聞こえてくる。


「…すごい……。」


そしてホールの中には、思わず声を漏らしてしまうほど大きいステージがあった。
あのステージからの景色は私達が普段liveしている会場とは比べ物にならないほど綺麗なんだろうな……。
そう思うと身体の奥から熱い"何か"が湧き上がってくる。
喉がムズムズして………。
…まるで喉が歌いたいって言っているみたい………。
抑えることの出来ないその"感情(ちから)"は私の意思を無視して……


_______弾けた。



『響くなら、届くなら
声が張り裂けても構わない〜♪』



奏だされたメロディは空気を伝って…このホール中に目一杯響き渡った。

この会場にいる誰よりも下手くそなのに…恥ずかしさなんて、躊躇いなんてもの微塵もない。

周りの視線が突き刺さる。律と千歌の静止する声が聞こえる。それでも…
この名も無き感情(ちから)を制御する事なんて私にはできなかった。