ギィギィも嫌な音が誰もいない旧校舎に響く。
今にも底の抜けそうな階段を慎重に上り終えるとその先には私の目的地があった。
古びた木製の扉にカラフルな色で書かれた"軽音楽部"の文字。
その様子から"以前"は明るい部活どあったことは容易に想像できる。
………今は使われていない旧校舎に部室があるということは…まあそういう事なのだろう。


立て付けの悪い扉を開け、中にはいると埃っぽい空気が部屋から押し出てくる。


(見た目と反して)中は案外良いつくりになっているようだ。
防音加工の施された壁、いたんで入るものの上等な楽器の数々………!このスピーカー超大手ブランドのやつじゃん。
そんな調子で色々部室(仮)の中を物色し始める。



「うーたーちゃん!」


「うわっ!?」



物色していると突然背後から声が聞こえてきた。
私にとって最も身近で、聞き覚えのある声だ。
男にしては珍しい、声変わりしたのにも関わらず高めのソプラノ声。
それは、地声の低い私からしたら大変恨めしいもので…。



「……なんだ千歌かぁ……。」



彼は群青 千歌、私の幼なじみの1人で、中学の時から一緒にバンドを組んでいる。
女の子らしい名前と容姿、そして声だが列記とした男。いや、男の娘というやつかもしれない。




「うわぁ…予想はしてたけど…すごいボロボロだね……。」



千歌は辺りを見回すと顔を顰めてそういった。
それもそうだ、何年もの間人が出入りしていないのだから…。
私だってここに軽音楽部がなければこんな旧校舎には立ち寄りたくない。それは全校生徒…いや、万国共通だろう。
もう某ビフォーアフター系番組も手に負えないボロさ加減なのだから。

………それでも


「それでも……漸くここまで来た………!」



「…うん…!…約束が果たす時が漸く…!」



強い意志を持った声がが響く。


こんなボロ校舎だけど………
それでもここに来る理由が私達にはあったんだ。
それは…遡ること二年前、私の私達の"もう一人"の幼なじみとの小さな…それでも確かな約束の話……。






私達の青春の起源の話_______





黒色のベースが良く似合うキミは今どこで何をしていますか?